喉頭とはいわゆるのど仏のところをいい、硬い軟骨に取り囲まれています。この喉頭は呼吸の時の空気の通り道であるとともに声を出す役割を持っています。ここにできたがんを喉頭がんといい、年間の患者数は約3000人程度です。
最も危険なのはタバコで、喉頭がんの95%が関係しています。1日の喫煙本数X喫煙年数で示される数字をブリンクマン指数といいます。例えば毎日20本、15年間吸った人のブリンクマン指数は300となります。この数字が400以上となると喉頭がんの発生率が高くなります。その他、過度の飲酒も喉頭がんの原因となります。
声帯そのものに出来るため早期から声がれが起こります。声がれは声を使いすぎたり風邪を引いた時にも起こりますがその様な場合は2ー3週間で良くなります。2ー3週以上続く声がれはがんの危険性があり要注意です。声帯より上の方にがんが出来た場合は声がれよりも先に食べ物を飲み込んだ時の違和感や痛みなどの症状が出てきます。さらに進行すると、血痰や呼吸困難が生じてきます。時に首のリンパ節に転移してしこりが出てくることもあります。
①2-3週間以上続く声がれ
かぜや、声の使い過ぎによる声がれはしばらくすれば治るが、がんによる声がれはいつまでも続き、ひどくなっていく。
②食べ物を飲み込んだときの痛み、つかえ感
かぜの時はのど全体が痛いが、がんの場合にはいつも同じ所の痛みとして感じ、徐々に強くなっていく。
③首のしこり
成人の首のしこりは悪性のことが多く要注意。
早期であれば、放射線で完全に治る可能性が十分あります。ある程度進行した場合には放射線と同時に抗がん剤を投与する化学放射線療法が行われます。これは副作用も強くつらい治療ですが、喉頭を温存できるという大きなメリットがあります。また、声が残るように喉頭を部分的に切除する方法もあります。しかし、さらに進行した場合には喉頭の全摘術が必要となります。この場合、声が失われることになりますが、様々な手段で声を取り戻せることができます。食道に空気を飲み込んでそれをげっぷのように戻して発声する食道発声、気管から食道に向けてバイパスのパイプを入れて発声するシャント法、さらに電気喉頭を用いた発声などがあります。これらの手段により会話は可能となりますが、やはり肉声を失うことはつらいことです。
早期がん | ・放射線治療 ・抗がん剤 ・部分切除 ⇒声帯が残り、発声が可能 |
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進行がん | ・喉頭全体を摘出 ⇒声帯を失う。代用部は習得可能。 |
大事なことはがんの予防のために禁煙すること、早期発見のために声がれに注意することです。
医師 頭頸部外科部長
菅澤 正 (すがさわ まさし)
SUGASAWA MASASHI
日本耳鼻咽喉科学会専門医・指導医、 日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医・指導医、 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医・指導医、 日本気管食道学会認定気管食道科専門医、 日本がん治療認定医機構がん治療認定医、 緩和ケア基礎研修会修了、 臨床研修指導医講習会修了、 医学博士
医師の詳細はこちら医師 耳鼻咽喉科部長
明石 健 (あかし けん)
AKASHI Ken
日本耳鼻咽喉科学会専門医・指導医、 日本頭頸部外科学会 頭頚部がん専門医・指導医、 日本がん治療医認定機構 がん治療認定医
医師の詳細はこちら医師 腫瘍内科 部長
大山 優 (おおやま ゆう)
OYAMA Yu
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、 米国腫瘍内科専門医、 米国血液科専門医、 日本臨床腫瘍学会指導医、 日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、 日本臨床腫瘍学会協議員、 日本臨床肉腫学会理事、 日本サルコーマ治療研究学会評議員
医師の詳細はこちら医師 放射線科 部長・放射線治療センター長
庄司 一寅 (しょうじ かずふさ)
SHOJI Kazufusa
日本放射線腫瘍学会・日本医学放射線学会 放射線治療専門医、 厚生労働省指定オンライン診療研修修了
医師の詳細はこちらのど風邪、声の使い過ぎ、タバコの吸いすぎなど日常的な原因で声はかれますが、ほとんど数週以内に治ります。いつまでも治らない声がれの原因として、喉頭がん以外に喉頭ポリープ、声帯麻痺(甲状腺がん・脳梗塞・胸部の疾患などで起こります)などもあります。
首の前面下方に直径15ー20mm程度の穴を空け、そこに気管の断端を縫い付けます。その穴を気管孔と言い、空気は鼻や口、のどを通らず、その気管孔から直接気管・肺に入っていきます。
水が気管孔に入るとおぼれることになります。従って、お風呂にどっぷりつかったり、水泳をしたりすることはできません。また本来、鼻呼吸で行われていた加湿加温が行われなくなり、気管孔から直接冷たく乾燥した空気が気管に入るので炎症を起こしやすくなります。それを防ぐためにガーゼを気管孔の前に当ててマスクの役割をさせることが重要となります。
通常、放射線は週5ー6日、6ー7週間続けますが、3ー4週を過ぎた頃からのどの粘膜の炎症が強くなりのどの痛み、痰、咳などがおこってきます。その炎症を軽くすることが大切で、禁煙はもちろんのこと刺激のある食物を避ける必要があります。さらにのどの痛みに対応するため軟らかめの食事に切り換える必要があります。